気まぐれ猫くんの手懐け方
「……きれい…」
隣にいる猫くんが、私の手をそっと握ってきた。
「あのさ、俺、思った」
「え?」
そこでやっと、猫くんの方を見る。
暗くて、猫くんの顔がよく見えないけど、花火が上がる度に一瞬だけあらわになる、猫くんの真面目な表情。
「こういうイベントものって、誰と行っても楽しいに決まってる。……だけど、どこに行っても『俺と一緒だから楽しい』って、そう思ってもらえるように頑張る」
「猫くん……」
その言葉に、胸がぎゅうっと締め付けられて。
「……私も、同じこと、思ってた」
「え?」
「私、猫くんと一緒だから楽しいって思えた。…けど、私ばっかり、一人で楽しんでるんじゃないかって、不安になって……」
ぎゅっと、猫くんの手を握り返す。
「猫くんにも、『私と一緒だから楽しい』って、思ってもらえるように……頑張り、ます…」
「……」
またひとつ、どーんと音をたてて花火が上がった。