気まぐれ猫くんの手懐け方

「……きれい…」


隣にいる猫くんが、私の手をそっと握ってきた。


「あのさ、俺、思った」

「え?」


そこでやっと、猫くんの方を見る。

暗くて、猫くんの顔がよく見えないけど、花火が上がる度に一瞬だけあらわになる、猫くんの真面目な表情。


「こういうイベントものって、誰と行っても楽しいに決まってる。……だけど、どこに行っても『俺と一緒だから楽しい』って、そう思ってもらえるように頑張る」

「猫くん……」


その言葉に、胸がぎゅうっと締め付けられて。


「……私も、同じこと、思ってた」

「え?」

「私、猫くんと一緒だから楽しいって思えた。…けど、私ばっかり、一人で楽しんでるんじゃないかって、不安になって……」


ぎゅっと、猫くんの手を握り返す。


「猫くんにも、『私と一緒だから楽しい』って、思ってもらえるように……頑張り、ます…」

「……」


またひとつ、どーんと音をたてて花火が上がった。



< 268 / 273 >

この作品をシェア

pagetop