気まぐれ猫くんの手懐け方
***

「は~…緊張する…!!」

「陽愛、大丈夫かよ」


そんなこんなで時間が過ぎ、いよいよ最終種目、全員リレーの時間。

胸を押さえて深呼吸している私に、心配そうに声をかけてくれた玲央くん。


「ね、猫くんとさっきまで猛特訓してたんだけど…」

「…あいつと…?」

「い、一度も上手くいかなくて……」


だって猫くん、素早いんだもん。

スタートするのが早いんだもん。

追いつけないんだもん。


「ああああ、大丈夫かなあ…!!」


もはや私の中でリレーの趣旨が、勝つことではなく猫くんに無事にバトンを渡すことになっている気がしてならない。

と、とりあえず。


「玲央くんはアンカーでグラウンド一周だもんね、頑張ろうね!!」

「お、おう」


私に圧倒された様子の玲央くん。

しかし私は自分のことで精一杯で、そんなことには全く気づいていなかった。



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