あめあがり、かたおもい
なんだか大切な物を失ってしまったような寂しさを感じながらも、私はひとり傘を差して歩き出した。
雨の中、遠ざかる幼なじみの背中を見ながら、思う。
恭平って、あんなに逞しかったっけ……。肩は広いしがっしりしているし、腕は私よりずっと太くてなんだか固そうだ。
そっか……きっと失ったわけじゃない。あたしたち、こうしていろんな変化を繰り返しながら、大人になっていくんだ。
*
夕立ちはほんの十分ほどで上がり、頭上が急に明るくなった。
そのとき、足元の水たまりに虹が映っていることに気がつく。
パッと空を見上げれば、雲間からのぞいた晴れ間にくっきりとアーチがかかっていた。
「きれい。どうせなら恭平と見たかったな……」
思わずつぶやいた自分の言葉に自分で少し驚き、胸に手を当ててみる。
すると心の奥で何かが目覚めかけているのを感じて、けれど深く突き詰めるはやめた。
今はまだ、ひとつの片思いが散ったばかりだもの……きちんと傷が癒えて、自分の気持ちに変化が訪れるのを、ゆっくり待とう。
大キライな夏も、雨上がりは悪くないかもって思えた今日のように。
心に虹がかかる日は、きっとやってくるから。
END