あめあがり、かたおもい


なんだか大切な物を失ってしまったような寂しさを感じながらも、私はひとり傘を差して歩き出した。

雨の中、遠ざかる幼なじみの背中を見ながら、思う。

恭平って、あんなに逞しかったっけ……。肩は広いしがっしりしているし、腕は私よりずっと太くてなんだか固そうだ。

そっか……きっと失ったわけじゃない。あたしたち、こうしていろんな変化を繰り返しながら、大人になっていくんだ。







夕立ちはほんの十分ほどで上がり、頭上が急に明るくなった。

そのとき、足元の水たまりに虹が映っていることに気がつく。

パッと空を見上げれば、雲間からのぞいた晴れ間にくっきりとアーチがかかっていた。


「きれい。どうせなら恭平と見たかったな……」


思わずつぶやいた自分の言葉に自分で少し驚き、胸に手を当ててみる。

すると心の奥で何かが目覚めかけているのを感じて、けれど深く突き詰めるはやめた。

今はまだ、ひとつの片思いが散ったばかりだもの……きちんと傷が癒えて、自分の気持ちに変化が訪れるのを、ゆっくり待とう。


大キライな夏も、雨上がりは悪くないかもって思えた今日のように。


心に虹がかかる日は、きっとやってくるから。








END

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