あめあがり、かたおもい
*
『ごめん。なんとなくは、気づいていたんだけど……』
やっぱり。恭平の言ったことは、間違ってなかった。
『きみの気持ちには、こたえられない』
まっすぐな断り方が先生らしいなと思った。
あたしは、そんな先生だから、好きになったんだもん。
だから……先生を好きになったことに、後悔はない。けど。
「……っ。きょう、へい……」
ひとりで失恋の痛みに耐える強さはなくて、あたしは涙声でその名を呟きながら、幼なじみの姿をふらふら探す。
でも、自分たちの学年の靴箱にその姿はなく、どうしてか一個下の学年の靴箱のところで、見慣れたその姿はあった。
「きょうへ……」
呼びかけた途中で、彼がひとりじゃないことに気づく。
あれ? 誰か、女の子と一緒にいる……。
次の瞬間、彼と向き合っている下級生らしき女の子が、真っ赤な顔で言い放った。
「……あの! 私、先輩のことがずっと好きでした! もしよければ付き合ってください!」
あたしは見てはいけないものを見た気がして、靴箱の陰に身を隠す。