あめあがり、かたおもい
細められた目は、私をうらやんでいるようでもあり、切なそうでもあって、胸がきゅ、と苦しくなる。
「恭平……」
「ただ、雛のことけしかけといて、悪いけど……俺はもうちょっと、片思いでいいわ」
わざと投げやりな口調で言うのは、きっと、失恋したばかりのあたしを困らせない、恭平なりの優しさだよね。
実際、今告白されたとしたら、あたしはどうしたらいいかわからなかっただろう。
そんな彼に“自分だけずるい”だなんて言わないし、思いもしなかった。
お互いに靴を履いて外に出ると、空はどんより鉛色。そこからすぐに雨粒が落ちてきて、鼻の頭や頬にぽつぽつ当たった。
「あ、やべ、雨降ってきた。先生の言った通……あ、わり」
「別にいいよ、謝らなくて。それよりあたし、傘あるよ。一本だけど……」
「いいよ、雛が使え」
「え、一緒に」
「ばか、こちとら片思い中なんだから、相合傘なんかしたら勘違いするだろ」
不貞腐れたように言った恭平が、カバンを頭の上に乗せ雨の中に飛び出していく。
相合傘くらい、小さなころには何度だってしたことがあるのに……あたしたち、もうあのころとは違うんだね。