愛すべき、藤井。



***



新学期が始まって、もうかれこれ2週間が経とうとしている。


藤井と海に行ったあの日、藤井を忘れる努力をしようと決意した私は、相も変わらず藤井を目で追ってしまう毎日を送っている。


『2人で海まで行って、鼻くそオチってなに?』


と、新学期早々うめには呆れられたけど。
それが私と藤井なんだから仕方ないよね。



「にしても、まさか本当に文化祭……シンデレラやる気かな?」

「ありゃやる気でしょ〜」


昼休み。


パンにかじりつく私がうめへと質問を投げれば、お弁当箱からミニトマトをつまんで口へと運ぶうめがだるそうに答える。



「やっぱそうなるよなー」

「次のLHRで決めるっぽいよね」


うんうんと頷いた私は、夏休みに先生が言ってた事を思い出して1人吐き気に襲われる。


いや、面白いと思ってたけど、いざ本気で藤井がシンデレラとかやったらキモくない?

やだよ、藤井のシンデレラとか。恐怖でしかない。


「うめ、シンデレラやったら?」

「は?冗談じゃない。私、やるなら魔法使いのおばあさんがいい」



真顔で魔法使いのおばあさんをセレクトする辺り。さすがだわ、うめ。

……うっわ、想像すればするほど、似合いそう。
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