愛すべき、藤井。



「むしろ、夏乃がやったら?シンデレラ」

「ないない、ギャグ過ぎてやる自信ない」

「えー?意外といけるって。シンデレラやったら夏乃の人気に火がつくかもよ」


なんの人気だよ、うめ。
冗談は休み休み言えこら。


「あー、ないない。そんな」

「物好きいるわけねぇ」


突然、私の後ろからひょっこり顔を出した藤井は、憎たらしくも私が言いたかったことを口にした。


かと思えば、


───グイッ



「あっ!コラッ!!!藤井」


私の手を掴んで少し自分へと引き寄せた藤井は、何の迷いもなしに「パクッ」と効果音でも聞こえて来そうな勢いで、私のメロンパンにかじりついた。


藤井に触れられた手が、酷く熱を持っていく。


「んーまっ」

「……っ!私の食べ物をいつも許可なくパクつくのやめてってば!」

「いいだろ〜、減るもんじゃあるまいし」

「普通に減るから!!減ってるから、見ろほら」

「お前だって夏の間、散々俺のボディシート使ってくれただろうが」


───ギクッ


それを言われると胸が痛む。
自分で買おうと決意してからも、結局 私は藤井のボディシートを"分けて"もらっていた。

その節はどうもお世話になりました。


でもさ、それとこれは別だよ!!
だって藤井のは心臓に悪いじゃん!

いきなりパクッて来るし、完全に間接キスだし、藤井は気付いてないし、うめはニヤニヤして見てくるし。


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