愛すべき、藤井。


「藤井のバカ」

「バカ」

「バーーーカ」


私の後に続いて、うめ。
そして更にその後、恐らく藤井と同じタイミングで現れたのであろう神田くんが藤井に視線を向けながら続けた。


あまりのテンポの良さに思わず笑いがこぼれる私とは反対に、藤井は「なんで俺ばっかり!!」と、目を見開いて抗議を始めた。



「決まってんじゃない。バカだからよ」

「そうそう、何を今さら」


呆れたようなうめと神田くんの言葉に、藤井は「はぁ?」と、やっぱり納得が行かない様子だけど、こんな何気ない4人の時間が実は1番好きだったりするんだよね。


突然、フワッと香る洗剤の匂いに軽く振り向いた私は、


「メロンパン、俺にもちょうだい」

「え?」


顔のすぐ横で、メロンパン目がけて口を開ける神田くんにドキッとして身動きが取れなくなる。


「……っ」


別にあげるけどさ!いいんだけどさ!
その角度から来られるとドキドキするんですけど。


「おい、神田!!」


───ピタッ


あと少しでメロンパンに到達する神田くんを、なぜか必死に止める藤井に、神田くんが顔を顰めた。

< 106 / 280 >

この作品をシェア

pagetop