愛すべき、藤井。
「なに?」
「……いや、何って言うか……」
「藤井だってもらってたじゃん。自分は良くて俺はダメって言う理由は?」
「……いや、だから」
「ま、まぁまぁ!そんなに神田くんメロンパン好きだったの?ほら、あげるあげる」
いつも通りに見える神田くんと、タジタジな藤井。
タジタジな藤井を見かねて、つい助け舟を出す私に「伊藤は藤井に甘すぎ」なんて、とばっちりを受けてしまった。
そんなつもりはないけど、やっぱり『好き』って気持ちが『甘さ』を生み出しているのかもしれないな〜なんて、心当たりもあるから何も言えなかったけれど。
「ってか、神田 甘いの嫌いじゃん」
「あ、バレた?」
「へっ?じゃあなんでメロンパン??」
うめの一言に疑問でいっぱいになった私に、神田くんがフッと笑って私の耳元に顔を寄せた。
───ドキッ
なになになになに?????
もしかして、神田くんって私のこと???
え、まさか……
でも、今までこんなことされた事なかったし、神田くんって野球にしか興味ないのかと思ってた。坊主だし、坊主だし、それに……坊主だし。(関係ない)
そんな私に小さく笑った神田くんは、
「藤井、妬かせてみようかと思って」
私にだけ聞こえる声で、ボソッと呟いた。