愛すべき、藤井。
「っ……!」
藤井を妬かせてみようかと……って。
何じゃそりゃ!!!
「あーあ、伊藤 顔真っ赤」
「だ、誰のせいだと思って!!」
私からスっと離れた神田くんは、とぼけた顔して私をからかうから、ムキになって答えた私は傍から見れば神田くんに何か言われて照れてるやつに見えるんだろう。
その証拠に、
「…………っ」
ジトーっとこちらを見つめる藤井の視線に、さっきの神田くんの言葉を思い出してドキリとする。
『藤井、妬かせてみようかと思って』
って、妬くわけあるかい!相手はあのアホで有名な藤井だよ?妬いてくれるようなら振られてないし!
「あっれ?気になる?……藤井くん」
「別に」
「あっそ?まぁ、聞かれても教えねぇけど」
「……別に聞きたかねぇよ」
いつにも増して挑発的な神田くんと、いつにも増して不機嫌な藤井が、売り言葉に買い言葉を繰り出す光景に高速瞬きを繰り返す私。
「神田、いい仕事してるね」と、私に耳打ちしたうめの言葉を今ひとつ理解できないのは、
「夏乃のアホ」
「はぁ??」
「ドアホ、大バカ、短足、色気ナシ」
「ちょっと藤井!!突然 暴言連呼しないでよ、何のつもり?」
確かに、私がドアホだからなのかもしれないけどさ。