愛すべき、藤井。
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昼休みが終わり、LHRの時間がやって来た。
議題は文化祭の演劇について。
もちろん、先生は「シンデレラに決めた!」と張り切っていて、それに対するみんなの「えぇ〜」って言葉に「優勝目指してんだよ!!」と、熱血ぶりまで発揮してくれている。
先生、冷静に考えて。
藤井のシンデレラで優勝なんて……無謀。
「ふぅ」
未だにあーでもない、こーでもないと熱弁する先生を横目に、私はやっぱり藤井の背中を見つめている。
少し猫背っぽい背中とか、シャーペンを回す指先とか、机の下でクロスしてる足とか。
なんで藤井なら全部、好きだなって思うんだろう。
寝癖ついてるし、ワイシャツの下に着てるTシャツ透けてるし、
……って、ちょっと待って。Tシャツに
『I feel happiness when I eat a potato.』
って書いてない?いや、書いてるわ。完全に、私はじゃがいもを食べると幸せを感じます。って大々的にお知らせしてやがるわ。
「アホ過ぎだろ、藤井」
じゃがいも……ぶふっ
あまりの衝撃に口元が自然と緩む。ダメだ、本物だわ、藤井。お前のアホ加減……本物だわ。
「ふ、くくっ……」
授業中だってのに声を殺せずに笑ってしまう私を、もちろん脳内シンデレラ一色の先生は見逃さなかった。