愛すべき、藤井。
***
「なんで立候補したの?」
「バカめ、王子役なんて俺以外に出来るやついねぇだろ」
「いや、いるでしょ。むしろ藤井が王子役とか1番ないでしょ」
「あぁ?」
「だって、藤は藤でも藤村くんの方が断然……いや、同じ土俵に乗せるのも申し訳ないくらいイケメンじゃん、自覚あるでしょ?」
「お前なぁ!!仮にも俺のこと好きとか言っておいてその言い草は酷すぎだろ!!」
「ちょーーー!!!声でかいし!誰かに聞かれたらどーしてくれんの?バカなの?」
「……っ」
私の言葉にアゴを突き出してシャクレて見せた藤井に、これ以上何を言っても無駄だと察した私は突っ込むことすら面倒くさくなって口を閉じた。
まぁ、いいよ。
藤井との想い出がまた一つ増える。たったそれだけのことだし。
どうせだし、楽しもうじゃないか。
いつもの帰り道。ここんところ藤井にこいでもらいっぱなしだったし、自分からこぎ担当を買って出た私。
最近、やたらと藤井がチャリ乗るならジャージの下履け!ってうるさいから、今日は言われる前に履いていた。
藤井がそんなこと言い出すようになったのは、告白してからな気がして……もしかして、振ってから私のこと気になり始めたパターンあったりして?
女として意識してくれてたりして?
なーんて思ってた私は、
案の定「お前ジャージの下……」なんて言い出した藤井に「ジャジャーーンッ」とスカートをめくって見せて、最強にあきれた顔された。