愛すべき、藤井。
「ずっと前から女だよ!それに私……ファーストキス、だったんですけど」
「……そこはお互い様だろ。むしろ、俺が訴えたいくらいだっつーの」
「はぁ?なにをよ!!?」
「ファーストキスって大事なもんだぞ?それをまさか夏乃に理性ぶっ飛ばされて奪われるとか誰が思ったよ?」
「ちょ、私が奪ったみたいに言うな!!てか、そもそもさ?私は藤井を必死に諦めなきゃって思ってるのにさ?」
「なんで?」
キョトンと、あたかも私が言ったことがおかしいことだったのかと思ってしまうほど、平然と疑問をぶつけてくる藤井に
私のキャパシティは限界を迎えた。
「なんでって……振られたし」
「諦めなくてもいいんじゃない?」
「なんでそう言うこと言うの?」
こっちは振られて、傷ついて、それでも藤井のそばにいたいから友達でいる道を選んだのに。
……なのに、
「だって俺、やっと夏乃のこと女として意識たのに。ここまで来て俺のこと諦めるのもったいなくね?」
藤井の家の前。
今日も柴犬のまつりは、藤井の帰宅にキャンキャンと尻尾を振って、玄関の前にチョコんと座りながら待っている。
いつもと違うことと言えば、私と藤井に少しだけラブハプニングが起きたことくらい。