愛すべき、藤井。
藤井を忘れるチャンス到来?
***
「うわ、かっわい〜」
「どこがよ!本当にヤダー」
「全然いけるって!いや、まじで!今まで見てきた中で一番可愛いよ!夏乃!」
「……えぇ〜!恥ずかしくて、こんなカッコじゃ人前に出られないよ〜」
文化祭準備が始まった。
クラス展示のPR看板を作る人や、クラス展示の飾り付けに追われる人、模擬店の準備に忙しい人や、私たちみたいに演劇の準備に追われる人。
校内はまだ準備期間だということも忘れてしまうほど、ワイワイと盛り上がりを見せている。
そして、
「あ、ちょうど良かった!ね、神田〜!」
「ちょ!うめ〜!やめてよ、もう脱ぎたい!」
「いいじゃん!せっかくだもんせめて神田と藤井には見てもらおうよ!」
「いや、今見せなくても……どうせ当日見られることになるし!」
少し遠くでクラス展示を手伝っていたらしい神田くんに手招きしたうめ。
それに気づいた神田くんは一瞬「ん?」って顔してうめを見た後、「おぉ!」なんて感嘆の声を上げて私たちの元へと駆け寄ってくる。
「いいじゃん、伊藤似合ってる」
「本当に?ドッキリとかじゃい??」
「それ、野球部のやつらが見たら完全にノックアウトだと思う」
「え?野球部?」
演劇の当日用に……と、うめの叔母さんが仕立ててくれた水色の綺麗なカラードレス。