愛すべき、藤井。
「夏乃〜!」
───ビクッ
遠くから藤井の呼ぶ声が聞こえて、瞬時に体が強ばる。見られたくない!見られたくない見られたくない!!!
藤井なんかにこんなカッコ見られたら絶対バカにされるに決まってるんだから。
「ちょっと、何してんの夏乃」
「頭隠して尻隠さず」
咄嗟に近くの机に隠れた私に、うめと神田くんが息の合ったツッコミを披露してくれるけれど、
「シッ!藤井に見られるわけにはいかないのよ!」
こっちはリアルな戦いの最中だから察して欲しい。
「おーい!夏乃〜?」
そんな私の気持ちを全く察する気のない藤井の声が、あろう事かどんどん近づいてきて、
「…………何してんの、お前」
あぁ……、普通に見つかった。
こうなったら仕方ない。
ドレスを着てることも、髪の毛が軽くセットされてることも、この際、藤井には一切つっこむ隙を与えない方向でいこう。