愛すべき、藤井。
「なんだよ、人がせっかく褒めてやってんのに」
「……今、藤井なんて言った?」
「だから!……いや、なんかもう言えねぇ!さっきのはポロッと出たから言えたけど、意識して口にするのは無理!」
「何それ、意味わかんないわ」
「つまりほら、そういう事だよ、ね?神田」
「うんうん、間違いなくそういう事だね、うめ姐さん」
理解不能な私をよそに、うめと神田くんはアイコンタクトを取りながら不気味な笑みをこぼしている。
てか『うめ姐さん』ってなに?初耳だけど。
それでいいのうめ?『うめ姐さん』って。ぶはっ。
あ、でもまぁ、私が勝手に脳内で『姐さん』に変換しただけで、神田くん的には『姉さん』なのかもしれないけど。
どっちにしろ、なんか時代劇に出てきそうだよ、うめ。言うと視線で殺られそうだから言わないけど。
「……とりあえず、ありがとう藤井」
「おう!あれだ!ほら……馬子にも衣装!」
「…………藤井?なんでいつもアンタは一言余計なの?言わなくていいことを声高らかに!」
「は?……俺、今褒めたじゃん!馬子にも衣装だってば!!」
「てっめ、藤井!馬子にも衣装を連呼すんな!そもそも意味を履き違えてんの?何なの?辞書引き直せ!このオタンコナス!!」
やっぱり、藤井に『可愛い』と言ってもらえたって、藤井からしたらその『可愛い』に深い意味はなくて。