愛すべき、藤井。


『あ、そうそう。本題なんだけどさ』

「うん?」


私が藤井を気にしている間にも、どんどん話を進める立花くんに、半ば上の空で相槌をうてば、



『俺とさ、付き合ってくんない?』


立花くんは、突拍子もなく私の耳にとんでもない言葉を放り投げた。


「はぁ?付き合う??」


あまりにビックリしすぎて、思わず叫んでしまった私の言葉に、今度こそ間違いなく藤井が顔を上げて私を見た。

もちろん、うめも神田くんも。


みんな何が起きたんだ?とばかりに私へと視線を向けるから、私は電話が終わったら問い詰められること間違いなしだと覚悟しながら、再び電話口の立花くんの声に耳を傾ける。


『いやー。ほら、俺モテるじゃん』

「意味わかんない」

『最近、ストーカーっぽいのに付けられてて困ってんだわ。だから、伊藤に彼女のフリして欲しいんだけど』

「いや、待って。なんでそこで私?同じ学校の子に頼みなよ!」

『校内で彼女役頼めそうなやついないんだって。それに後々面倒くさいじゃん』

「後々って?」

『彼女のフリ頼んでた〜とか言うとまたややこしいし、黙ったまま元カノってことにするのもダルいし』


ペラペラと言葉を並べる立花くんに、未だ全然頭の生理が追いつかない私はキョトン、と藤井と目があったまま固まって動けない。
< 130 / 280 >

この作品をシェア

pagetop