愛すべき、藤井。



「は?だから、立花は」

「藤井はうるさい。アンタは何ポジションで夏乃の色恋に口出しすんの?あ?夏乃に幸せになって欲しくないの?」

「……っ」


うめの迫力に負けた藤井は、グッと何かを堪えて押し黙ってしまった。


確かに、幸せになるためにはいつまでも鈍ちん藤井と登下校を共にしている場合じゃないのかもしれないな〜。どんだけ一緒にいたって、やっぱり藤井の鈍さは神がかってるし。


それに、そんな藤井を好きな気持ちは増していくばかりだ。


この際、立花くんとの時間の中で、藤井以外の誰かを好きになる方法を見つけることが出来るなら、私にとってもいい機会なのかもしれない。


「ね、藤井」

「……んだよ」

「私、今日から放課後は立花くんが迎えに来てくれることになったから」

「は?」

「だから寂しいだろうけど当分は1人で帰って!寂しいだろうけど」

「アホか、寂しくねぇ!!」

「そう。じゃあ、そういう事で」


本当は寂しいくせに強がっちゃってさ。

私を好きとか嫌いとかそんなん抜きにしたって、もう何年と一緒に帰ってた道を1人で帰るって、絶対寂しいよ、藤井。



だけど、決めた。


今日からしばらく、藤井離れしようと思う。
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