愛すべき、藤井。
────ドッドッド
やけに鮮明に聞こえる自分の心臓の音。
やっぱり、藤井……もしかしてヤキモチ妬いてる?私と立花くんにヤキモチ妬いてるんじゃないの?
「夏乃、俺……」
「おーし!!演劇のリハーサル始めっぞ〜」
何か言いかけた藤井の言葉を、何ともタイミング悪く遮った担任は鼻歌なんか歌ってルンルンだけど、私の心はモヤモヤだよ!!
「藤井、今なに言おうとした?」
「……んーや、何でもない。やるぞ、リハ」
藤井が何を言いかけたのか、結局また聞くことが出来なかった。いつもいつも、タイミング悪すぎ。
歩き出した藤井の背中を見つめながら、モヤモヤした気持ちが消えない。
『夏乃、俺……』
……なに?なにを言おうとしたわけ???
気になってリハどころじゃないって。
「夏乃〜〜!!ほら、早くおいで」
「あー、もう!今行く〜〜!」
うめが教室の入口から大きな声で私を呼ぶから、モヤモヤする心に必死にフタをする。
後で絶対、藤井のやつ問い詰めてやるんだから。