愛すべき、藤井。


***



あれから立花くんから逃げるように家の中に入った私は、自分の部屋に入ってすぐ、制服のままベッドにダイブした。



立花くんと藤井……そして、私。


なんとも謎なメンツで帰ってきたなぁ……なんて天井を見つめながらぼんやり考えて、


「藤井……」


ボソッと零れる、愛すべきアホの名前。


【伊藤】も反対にすれば【藤伊】だなーとか。逆に【藤井】も反対にすれば【井藤】だなーとか。


ほんっとくだらないことばっか考えてるうちに、ウトウトと睡魔に襲われてまどろみ始める。


少しだけ目を閉じて、自分に休息を与えよう。ほら、ここんところシンデレラ役のせいで、変に緊張して身体ガッチガチだったから。


リラックス……リラックス…………。




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───────



───ブブッブブッブブッ



ぼんやりする意識の中、スマホのバイブが鳴っている気がして重いまぶたを開けた。
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