愛すべき、藤井。



ベッドの上に転がってるスマホに手を伸ばせば、【藤井 絢斗】からの着信に一瞬で目が覚めた。


スマホ画面をよく見れば、もう20時26分を表示していて、私は軽く2時間近く寝てしまっていたらしい。


応答ボタンへスライドさせた指が心做しか震えた。藤井からの電話なんて、別に今まで何度もあったのに、どうしてこうも緊張してしまうんだろう。


……ってか、私制服のままじゃん。

『シワになるから帰ったらすぐ脱ぐ!!』


この間ママに言われてた言葉を思い出して、私は瞬時に青ざめる。

あちゃー、またシワできちゃったかも。ごめんママ。


「……も、もしもし」

『おー、俺』


耳に当てたスマホから聴こえてくる、ちょっと低めの藤井の声に、ギューって胸が締め付けられる。


藤井さ?『おー、俺』ってだけでここまでときめいてくれるの、私だけだと思うの。

ほんと、感謝してほしい。



「うん、どーかした?」


藤井からの電話は基本、あのテレビが面白いから観てみろとか、明日の時間割なんだっけ〜とか、今日なんか課題あったっけ?とか。


かなりくだらない内容が多いから、いつも5分もかからずに終わってしまう。


なのに、藤井と電話した夜は、1人でニヤニヤする頬をつねりながらも、アホみたいに幸せな気分になるから、嫌いじゃない。


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