愛すべき、藤井。


『あー、うん』

「明日は藤井の大嫌いな英語が1限目だよ」

『げっ、まじかよ。はー、最悪だ』

「ちなみに、今日は英語の課題が出てたよ。ちゃんとやって来ないとまた当てられるよ?」

『は?そうだっけ?ねぇわ……最悪パート2じゃん』


なに、最悪パート2って。
じわじわ来るんですけど。


電話の向こうで頭を抱えているであろう藤井を想像しながら自然と笑いが零れる私は、


『ってか、今日電話したのは時間割聞くんでも、課題聞くんでもなくって』



そんな藤井の言葉に「え?」と小さく聞き返した。


『なんつーか。消化できなくて』

「夜ご飯食べすぎた?」

『ちげーよ!アホか。……今日の帰り、立花にされてたやつ』


ボソッと不貞腐れ気味に呟く藤井に、今日の放課後の出来事を呼び覚ましてみる。


立花くんには色々された。


肩抱き寄せられたり……
手を繋がれたり……
名前呼びされたり……

でも多分、藤井が言ってるのは


「立花くんにされたデコチューのこと?」



多分これの事かな?って、直感的に思った。


『……サラッと言うなよ』

「じゃあズシッと言えばいいわけ?」

『……アホ、そういう事じゃねぇ』


どう言ったって気に入らないなら、初めから文句付けないで欲しいんですけど。

電話越しだから、藤井が今どんな顔してるか分からない。こうして話してるとさ、


会いたいなぁって、思うよ。
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