愛すべき、藤井。
そう考えると、変に入らない演技をするよりもスッポリ足を突っ込んで終わりなシンデレラでよかった。なんて、変なところでホッとしてる私。
「ダメよ!王子様との結婚がかかってるのよ?何が何でも入れなきゃダメなのよ!!」
義姉役の中でも1番上の姉は根性が悪い役で、普段はカラカラと笑う陽気な江本さんも、
演技力のせいか、とてつもなくゲスい。
そう考えると、ドラマの世界で悪役をやっている俳優さんたちって本当にすごい。
主人公を引き立てているのも、悪役あってこその事だろうし、何より『嫌な奴』とドラマに感情移入させるのも、悪役を務める俳優さんの演技力がなせる技なのだから。
……私にはとてもじゃないけど無理。
「……どうやらお前達ではないようだな」
フッと鼻で嘲笑う王子様に、義姉3人が悔しそうに下唇を噛み締める。
……何だかんだ、藤井もしっかり演技してるんだ。
そう気づいてしまったとき、私の中で爆発的な笑いの波がやって来た。だめだ、あの藤井が演技してるとか……しかも王子役!!
白タイツを免れた藤井は、完全にそれダ〇ソーから買ったでしょ!って言う王冠をかぶり、腰からは同じくダ〇ソーでかったよね?ってくらい簡易的な剣を携えている。
中世の王子様ってよりは、現代のちょっと豊かな小国の皇太子みたいな白の軍服っぽいチュニックを着ている。
これもまた、うめの叔母さんが仕上げてくれたものだ。