愛すべき、藤井。
もう伝えないって決めたのに、やっぱり好きが溢れて止まらない私は、シンデレラとして王子様に想いを伝えることにした。
昨日、寝る間も惜しんでセリフ考えたんだよ?藤井。
どうだ、参ったか!
ニッと笑って見せた私に、藤井は小さく溜息をこぼした。
あれ、失敗???
ちょっとは心掴まれて欲しかったんですけど。やっぱり鈍感藤井には生ぬるかった??
もはやアドリブ入れんじゃねーよ!って怒りの感情がデカかったりする?
藤井の次のセリフに上手く繋がるように、私なりに考えたつもりだったのになぁ…
「……ね、藤井っ」
!?
───グイッ
固まる藤井が心配になって、藤井にしか聞こえないくらい小さな声で名前を呼べば、
いきなり私の視界はグラッと揺れた。
「……バカ」
「え……」
私の腕を強く引いた藤井は、バランスを崩して倒れる私を簡単に支えて、
───チュッ
そのまま、私の額に触れるだけのキスを降らした。
優しくて、温かいその感触に私はただ目を見開くしかない。
……もちろん、こんなの台本にはないし。藤井と事前に打ち合わせしてたわけでもない。
先にアドリブを始めたのは私だけど、これが藤井のアドリブ返しならズルいと思った。