愛すべき、藤井。
***
「なーつの」
「あ、立花くん。いらっしゃい!いつ来たの?」
あれから担任に「アドリブには冷や冷やしたけど、最高の盛り上がりだった!」と褒めしてもらった私と藤井はお互い顔を見合わせてホッとした。
せっかくだから今日1日シンデレラの格好でいようとうめに提案されて、それはもう激しくお断りした私は『叔母さんも長く着てくれた方が喜ぶと思う』と言ううめの言葉に、渋々着替えることを諦めた。
しかもうめの野郎、あの劇が終わってから私と藤井を交互に見ては終始ニヤニヤしている。
私のアドリブに藤井が突っ込んでくることも、私が藤井のアドリブ(?)に突っ込むこともないまま、
うめと藤井と3人でこれから焼きそばを買いに行こうと歩いていたところで、タイミング良く立花くんに声をかけられたってわけだ。
「さっき。夏乃にLINEしたのに読まねぇから探した。あ、タイミング良くデコチューは見れたぞ、藤井」
「……あっそ」
藤井のことだから『うるせぇ!!』とか言って怒るかと思ってたのに、立花くんに対してかなり拍子抜けな言葉を呟いて、隣にいた私を少しだけ引き寄せた。