愛すべき、藤井。


***


「おー、神田ー」

「おつー!」

「頑張ってる〜?」



焼きそばの屋台では、頭にタオルを巻いた神田くん他数名が、額に汗を滲ませながら焼きそばを焼いている。


「お、みんな劇終わった??お疲れ。俺も見たかった」


そう残念そうに肩を落とす神田くんは、午前中の係で私たちの劇を見に来れなかった。私としては好都合っていうか、恥ずかしいから逆に助かったけど。


「やっぱり似合うね、可愛い」

「え!!……今日初めて言われたよ。ありがとう神田くん」


私のドレス姿を見て、やっぱり褒めてくれる神田くんは安定的な紳士なのに、隣の藤井は「んなことより焼きそばー!」と、私には微塵も興味がなさそうだ。


「焼きそば3つでいい?」

「あ、うん!」

「お腹空いたー!神田ももうすぐ上がりなら一緒に食べようよ」


うめの誘いに「あ、そうする」と嬉しそうに笑った神田くんは、手際よく出来立ての焼きそばをパックへと盛り付ける。


「はい、藤井。200円。女子2人の分は俺が奢る」

「は……?なら俺のも奢れよ!」

「やだよ。野郎に奢る趣味はない」

「お前なぁ!……つーか、いいよ。夏乃と坂部の分も俺が払う」


少しの神田くんとのやり取りの後、藤井はポケットから千円札を取り出して神田君へと差し出した。

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