愛すべき、藤井。


「やっぱり、絢斗くんだ……、久しぶりだね」

「ほんと、久しぶり」



香織と呼ばれたその子は、色白でどこか儚げ。
折れてしまいそうなくらい華奢な体に、肩までの黒髪がよく似合っている。


顔も整っていて可愛いけれど、それ以上に纏っている空気って言うか、雰囲気っていうか……とにかく"可愛い"そんな言葉がしっくり来る女の子。


嬉しそうに弧を描く口元と、ピンク色に染めた頬が藤井への気持ちを表している気がして



私は何だか、やけに苦しい。



「絢斗くん、突然いなくなっちゃうんだもん」

「あー。うん、親の離婚で転校することになってさ。挨拶もできなくて、ごめん」

「……そうだったんだ。高校ここにしたんだね!また会えてよかった」



あぁ、きっと。

彼女は私が知らない藤井を知っている。
まるで2人の世界、間違っても入っていける雰囲気じゃない。


うめが私の背中を静かにさすってくれるから、きっと私の今の気持ちは隠れることなく顔に出てしまっているに違いない。
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