愛すべき、藤井。
藤井には藤井の良さがある
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秋は短い。
あー、やっと秋が来たな〜。
そう思った次の瞬間には、冬がスグそこまでやって来ていることに気づいて、
そして、そのまた次の瞬間には冬の匂いに包まれている。
もうすっかり朝と夜は冷え込む。
去年の今頃買った、グレーとピンクの配色が可愛いチェックのマフラーが今年も活躍する季節が来た。
「夏乃!」
「なによ、朝からうるさいな」
私は、カラオケルームを飛び出したあの日から藤井を避けている。
朝は藤井が来るよりも早く、とにかく早く家を出て、時間を潰すためにわざわざ近所の公園で朝ごはんのパンをかじった。
学校では同じクラスと言うこともあり、もちろん顔を合わせないのは無理な話で、仕方なく話くらいはするけれど、
「いい加減、機嫌直せよ!!」
「なに?何のこと?……私、別に怒ってないよ」
「……っはぁ。お前な、突然カラオケルーム飛び出したかと思えば連絡つかないし、挙句 朝迎えに行けば『もう出たわよ?』って夏乃の母ちゃんに言われるし、学校でも全然素っ気ねぇし…!!」
それから、
ここ最近、藤井は放課後、香織ちゃんと帰っているらしい。と言っても、私は噂で聞いただけで、藤井本人から聞いたわけじゃないし、
実際に、自分の目で見たわけでもない。