愛すべき、藤井。
それでも藤井にはさ、良いところがいーっぱいあって、だからこそ私はそんな藤井を好きになったんだよ。
「……ごめん、頭冷やしてくる」
「藤井……?もう授業始ま……」
だから、藤井のこと悪く言っていいのは、私だけなんだから。藤井のことをよく知ってる、私だけ。
私の言葉も聞かずに教室を出て行く藤井の後ろ姿は、何だか少し寂しげで、追いかけて『ごめんね』って、ギュッて抱きしめてしまいたくなった。
……って、私は悪くないのに。
惚れたが負けとは、本当にその通りだと思う。
「夏乃、あんたは悪くないよ」
「そんな顔しないの」そう続けたうめは、私と藤井を少し遠くから見守ってくれていた。
私のことをギュッと抱きしめてくれるうめの胸に大人しくすっぽり納まった私が、
「ドラ〇もーん……藤井の記憶、全部消える道具出してよ〜」
「テレレレッテレ〜、……ハンマー」
「…………ちょっと待って、どうする気?」
「がむしゃらに、叩いてみる」
うめの言葉にやめてよ!と叫びながらも、大爆笑したのは言うまでもない。