愛すべき、藤井。
あれから、教室を飛び出した藤井は授業が始まっても戻ってくることはなかった。
どこに言ったんだろう……とか。
怒ってるのかな?とか。
色々と考えてしまって、全然授業に集中出来なかった私は『腹痛に見舞われてトイレで死んでた』と次の休み時間に神田くんに笑いながら話す藤井を見てホッとした。
同時にやっぱりイラッとした。
藤井のアホ。ドアホ、とも思った。
───すぅぅぅ
「あー、秋の匂いと冬の匂いが混じってる」
胸いっぱいに空気を吸い込めば、秋と冬、どっちとも取れる匂いに、急に切なくなった。
もう、藤井を避け始めてから2週間が経つのか。そりゃもうすぐ冬が訪れるわけだ。
文化祭が終わってすぐに、立花くんから電話があった。
『ストーカーの件、ようやく解決したっぽい。あ、でも俺と帰りたいならこれからも毎日迎え行くけど?』
なんて、いつもみたいにチャラッとした声に『結構です!』と即答したのも2週間前。
立花くんは、成績優秀、スポーツ万能。
オマケにビックリするほど容姿端麗。
そりゃあ、モテるわけだ!と言わせるには十分すぎるくらいパーフェクトに兼ね備えているけれど、
残念なことに少しばかり自意識過剰で。