愛すべき、藤井。
真っ直ぐ私を見つめる香織ちゃんは、少し呼吸が乱れていて、わざわざ走って追いかけてきてくれたのかな?と思うと、そこまでして私に何を言いに来たんだろう……?
そんな黒い感情がとめどなく溢れ出すから。
『気になって絢斗くんに聞きました』
……なんで気になったんですか?
やっぱり、藤井のこと今でも好きだからですか?
藤井はなんて答えましたか?
聞きたいことは山ほどあるのに、今 口を開いたら泣いてしまいそうで、ただキツくギュッと唇を噛むことしか出来ない私に、
香織ちゃんは、フワッと優しい顔で笑った。
その顔は、嫌味一つなくて、スッキリとしている。多分、今の私とは正反対の顔だ。
「ちょっとお話しませんか?」
さっきからただ固まったまま香織ちゃんを見つめる私に、香織ちゃんは少し先に見えるファミレスを指さしてまた微笑む。
本当は今すぐ帰りたいし、話すって何を?って思ってるのも事実だけど。……ここで逃げても仕方ないって思った。
香織ちゃんと向き合うことで、もしかしたら、今度こそ本当に藤井を諦められるかもしれない。
だから私は、コクンと頷いて、私の返事を待っている香織ちゃんに軽く微笑んで見せた。