愛すべき、藤井。


こんな可愛い子と放課後一緒に帰ってたら、そりゃ藤井もコロッと好きになっちゃうに決まってる。


……両想いかもしれないって状況で、何も言わずに転校した藤井が安易に想像できて胸が苦しくなった。


これは、藤井と香織ちゃんがお互いの気持ちを確認出来ないまま、すれ違ってしまったことに対する


なんとも言えない、切なさから来る痛みだ。



でも、藤井はやっぱりアホなんだな。
鈍感だからこそ、香織ちゃんが自分に好意を抱いてくれてるってことに気づかなくて、


自分の気持ち押し殺して転校してきたんだろう。



そう思うと、なぜか私が苦しさでいっぱいになる。バカな藤井。アホな藤井。愚かなる藤井。


そんな藤井を、こんなに好きな私はきっと、藤井よりもっともっと愚か者だ。


香織ちゃんの言葉に何も言えずにいた私に、小さく笑った香織ちゃんは「でもね」と続けた。


「そりゃ確かに、絢斗くんが転校したって知った時はすごくショックで、泣いたりもしたけど。

今はもう全然、1mmも未練なんてなくて!それにほら、今はすごく大事にしてくれる彼氏もいて、幸せだなって日々痛感してるし」

「え……?」

「あー!その顔はやっぱり、誤解してたでしょ?」


ニヤリと笑った香織ちゃんに、ドキッとして目を伏せる。

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