愛すべき、藤井。
だって、香織ちゃんは今でも藤井のことが好きなんだとばかり思ってた。だから、文化祭のあの日、藤井の連絡先聞いたんだとばかり……思ってた。
でも、目の前の香織ちゃんは、言葉通りフワフワと幸せオーラ全開で、とても嘘をついてる風には見えない。
……ってことは、また藤井は実らない片想いに再会しちゃったってことか。それはそれで可哀想だな。
どうせ私の恋が敗れるのなら、せめて藤井にとっては最高な形で敗れたかったのに。
これじゃ、共倒れだね。藤井。
「夏乃ちゃんが絢斗くんに告白したって話も、ごめん。絢斗くんから教えてもらった」
「っ!……藤井のバカ。ペラペラと」
「あと、最近、夏乃ちゃんが絢斗くんを避けてることも聞いた。……だから、もし私が絢斗くんのことを好きだって誤解されてて、身を引こうとか思ってたら嫌だなって!ずっとお話したいと思ってたの!」
「お話する機会をくれてありがとう」そう言って笑う香織ちゃんは、どこまでいい子なんだろう。
「ごめんね、私すごいヤキモチ妬いて、知りもしないのに香織ちゃんのこと嫌いになりそうだった」
素直にカミングアウトすることじゃないかもしれないけれど、香織ちゃんにはちゃんと謝りたいと思えたから、私も自分の気持ちを偽ることはしないときめた。