愛すべき、藤井。


「会えません」

『はぁ?なんでだよ』

「今会ったら、泣いちゃうかもしれません」

『……どうしてですか』

「藤井のこと、好きすぎて苦しいからです」

『……なら、俺にも責任があるのでやっぱり会いたいです』



言っている言葉の意味を、きっと藤井は理解していないんだろう。

だから簡単に『俺にも責任があるのでやっぱり会いたいです』とか言えるんだろう。


だけど、


鈍すぎる藤井にはもうコリゴリ!って思いながらも、会いたい気持ちが勝ってしまう。



「いいの?私はもう藤井なんか、嫌いだよ?」

『……よくねぇよ』

「藤井の嫌なとこいーっぱいあるよ」

『言ってみろよ、全部』

「誰にでも優しいところでしょ〜、鈍感すぎて腹立つところでしょ〜、後輩からの支持率ムダに高いところでしょ〜、困ってる子はほっとけなくて、必要以上に助けてあげて、その結果好かれちゃうところでしょ〜」

『待って、鈍感すぎて腹立つとこ以外、全部いい所じゃねぇの?』

「……実は真面目でさ。頼まれた仕事は最後まで何があってもやり抜くとことか、どんなにしょーもない事でも、私の話ちゃんと聞いてくれるとことか、鈍感なくせに気配りは上手って言う謎の素質あるとことか、特別イケてるわけじゃないのに、笑った顔を思い出すと可愛いなって思わされるとことか」

『ちょ、待った!!なんだこれ!!』


私の言葉に恥ずかしそうに慌てる藤井。電話口でヒューっと風の吹く音が聞こえる。

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