愛すべき、藤井。

***


「あーーー!!美味しかった〜」

「俺、もう夜飯食えねぇかも」

「はぁ?私ならあと3つはイケた!」

「お前の胃袋はバケモノかよ」


あれから、焼きたてアツアツ、サックサク、フワフワのクロワッサンを持ってきてくれた美和子さんは『好きなだけ食べていいよ』と、気前よくクロワッサンの山を見せて笑った。


あぁ、パン屋さんと結婚したい。

クロワッサンに囲まれて生きたい。
こんなに好きなのに、クロワッサンとは結婚出来ない運命だし、ならばクロワッサンを作り上げてくれる素敵な旦那様をゲットしたい。


「ねぇ、藤井」

「あ?」

「パン屋になる気はない?」


家までの帰り道。

やっぱり何の迷いもなく私にチャリをこがせて『食後の運動だ、死ぬ気でこげ』なんて言う藤井は憎たらしくて嫌になるけど、


「はぁ?なんねーよ」

「……あっそ」


藤井がパン屋になるなら、嫁に行ってあげたのにな。なんて思うくらいには、やっぱり藤井が好きだ。

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