愛すべき、藤井。
さっきママが持ってきてくれた薬を飲んだから、きっと少し寝たら熱も引くだろう。
起きててもぼーっとする頭で、無駄に藤井のムカつく顔を思い出してはモヤモヤするだけだし。
重たいまぶたは、頑張ることをやめた途端ゆっくりと閉じていく。
そして、すぐにフワフワした感覚に包まれて、私はそのまま意識を手放した。
***
───タンタンタン
静かな家の中で階段を上るような音が聞こえて、浅く眠っていたはずの私は、フッと目を開けた。
時間を確認しようとスマホへ手を伸ばしたと同時に、
───コンコン
短いノック音のあと部屋のドアが静かに開いて、スマホへと伸ばした私の手は、スマホに辿り着くことなく静止した。
「……っ」
「……」
だって、
だって、だって、だってさ。
ドアの前には制服姿の藤井が、首に珍しくマフラーなんか巻いて、だるそうにリュックを背負って立っている。
「……藤井?」
「はぁ……」
私の呼びかけに、盛大なため息で返事をした藤井は、それ以上何もいわずに、私の寝ているベッドへとずんずん近寄ってくる。