愛すべき、藤井。
「思えば、そん時から俺の中で"伊藤夏乃"は特別でさ。どんどん、夏乃と仲良くなるにつれて、傍にいて当たり前だって思うようになってた」
うん、と深く1度頷く。
それは私も同じだ。藤井と話して、藤井の人柄に触れて、藤井の良さを知って、あー!良い友達に出会えたなぁって……本気でそう思ってた。
「だからこそ、見落としてたっていうか。灯台もと暗しって言うか……近すぎて見えてないことがあったなって、やっと気づいた」
「……何を見落としてたの?」
半分、期待して。だけど、相手はあのどうしようもない藤井だから、半分、諦めて。
……ドキドキとソワソワが1度に胸の中で弾ける。
願わくば、藤井が見落としてたのが"伊藤夏乃を好きになる可能性"だったらいいな。
なんて、恥ずかしげもなく何を考えてるだか、熱のせいでついに頭がイカれてたきたかもしれない。
「夏乃に近づく神田にも、立花がチャラい奴だって分かってて彼女のフリ頼まれたり、誰もいない家に1人で看病に行こうとしたりする夏乃にも、すげぇムカついた。アホだと思った。もう俺のこと好きじゃねぇのかよって、悔しくなった」
───ドクンッ…ドクンッ
鼓動に合わせて、体が甘く痺れる。