愛すべき、藤井。
「もう暗いから、送ってく。早く降りろ」
「……っ、」
ずるいよなー。
藤井にはその手があるんだもん。
無自覚にサラッと優しい言葉を私に与えて、その度に私の胸はギュッと掴まれて、深みにハマる。
「い、いいよ!チャリだし、私ハイパワーだし」
「アホか。一応 戸籍上は女だろーが。何かあってからじゃ遅いんだよ、早く降りろ」
戸籍上の話までしなくて良くない?見た目も一応 女の子やってるつもりなんですけど、藤井には一体、私はどう見えてるんですか?
渋々藤井と代われば『早く』と、急かされて藤井の後ろに跨った。
やけに久しぶりで、ドキドキして。
あれ、どこに掴まってたっけ私!
え、どこ?サドル?いや、まさかな。
え?もしかして藤井に掴まってた??
いや、本当に覚えてないよ。
どうすんの、これ。
スピード出されてみ?下手したら落ちるじゃん。