愛すべき、藤井。


『入口前で立花待っててくれるらしいから、上手くやるんだよ!』


うめの言葉が勝手に脳内で再生された私に見えてきたカラオケ店の入口。


そして、西高の制服を着た立花くん。
久しぶりに見たな〜。立花くんとは本当に、中学の卒業式ぶりかもしれない。

やべ、緊張してきたぞ。


「あ、」


近づく私に気付い立花くんが、小さく声を漏らして私を見た。交わる視線に落ち着かなくてソワソワしながら、やっとの思いで声を振り絞る私。


「ひ、久しぶりだね!立花くん」

「おう、変わんねーな、伊藤」

「そう?結構大人っぽくなったつもりなんだけど」

「いや、成長が見えねぇ。胸の」

「……やっかましいわ!!!」


あれ。おかしいな。
さっきまで緊張してたはずなのに、なにこれ。

しかも久しぶりに会ったってのに、だいぶ失礼。この男、失礼。悪かったなAよりのBで!!


「ふっ、そのノリ懐かしいな」

「そりゃどーも」


ムッとした私に、益々笑い出す立花くんをキッと睨めば「入るか、藤井たち先に入ってる」なんて言われてドキッとする。


そうだった、私がここに来たのは藤井が合コンで女の子といい感じにならないように阻止するためだった……。
< 37 / 280 >

この作品をシェア

pagetop