愛すべき、藤井。
逃げようと構えた次の瞬間。
私の前に立ってみんなから遅いとブーイングを喰らっていたはずの立花くんが、私の手首をグイッと引いた。
お蔭さまで立花くんの後ろに隠れていた私は思いっきりみんなの前に登場してしまった。
あぁ、こんな登場する予定じゃなかったんですけど!立花くん、どういうつもりなのよ!と、再びキッと睨めばやっぱり立花くんは楽しそうに笑う。
「今日はもう1人、俺の連れも参加すっからよろしく〜」
緩い立花くんの声に、私は気が気じゃない。
明るめの茶髪、毛先を少し遊ばせているいかにもチャラそうな立花くん。切れ長奥二重で、クールな雰囲気なのに、話すと結構話しやすいし。
モテ要素をギュギュッと詰め込んだようなこの男は、きっと今日の合コンでも人気No.1なはず。
そんなこの男の連れとして紹介された私は、この場にいる女子勢を全員敵に回したようなもんだ。
「ちょっと!!勝手に紹介しないでよ」
「助けてやったんだろーが」
「よ、余計なお世話じゃ!!」
コソコソと立花くんに文句を言ってみたけれど、どうやら立花くんには悪気が全くないらしい。