愛すべき、藤井。
「それにしても、まさか伊藤が藤井を好きになるとはな。中学の頃から仲良かったけど、あの頃は恋愛に発展する感じなかったよな〜」


ガヤガヤとうるさいカラオケルーム、アニメボイスで可愛く歌い上げる女子を横目に、立花くんの話に耳を傾ける私。


あの頃はって言うか、今も藤井には『恋愛に発展する感じ』なんてものは1mmもないけどね。


「あ!!立花くん、私が藤井の合コン阻止するためにわざわざ捨て身で合コンに参加したってことは、」

「言わねぇよ、俺イイヤツだから」


近い。近いぞ、こら立花!!
分かってるけどさ、カラオケルームでうるさいから近くなくちゃ聞き取れないし、

私なんかの近くに寄ってきても立花くんには何のメリットも無いことくらい、すんっげぇ分かってるけど。


やっぱり、少しドキドキしてしまう。
イケメンってすごいな、これだけで相手にときめかれてたら、タラシたくなくったって、勝手に女タラシの称号を手に入れちゃうかもしれん。


そう考えると、ちょっと哀れだね。


「……自分で自分をイイヤツって言う人は信用なりませぬ」

「そういうこと言うと即チクる」

「ちょ、立花くんタチ悪い!立花くんじゃなくてタチ悪くんじゃん」

「はい、もう藤井にチクる」


やっぱ、立花くんって性格に難アリだわ。もう本当に、やだ。意地悪過ぎるこいつ。

でも、世の女子はあれか、こういう意地悪なイケメンが好きな時代だったりすんのか?


あ、忘れてた。
藤井を好きな私がイレギュラーだった。

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