愛すべき、藤井。


***



あれから何だかんだ時間は過ぎて「んじゃ解散すっか〜」と幹事らしき男(興味なくて名前も覚えてない)が解散宣言をした。


個人的には『合コン』としてはやっぱり何一つ楽しくなかったし、女子勢に知り合いがいないのは致命的だったけど、


藤井が気まぐれで席を移動してきてくれたおかげでずっと隣だったのもあり、立花くんと3人で中学時代の話に花を咲かせて、プチ同窓会的な雰囲気を楽しむことは出来た。



とは言え、久しぶりにこんな遅くまで遊んで疲れた。これは帰ったら泥のように眠るしかない。

幸い明日は土曜日だし、1週間溜まりに溜まった疲れを癒すにはもってこいだ。



「なぁ、伊藤」

「んー?」


カラオケ店を出ながら、少し前を歩く藤井に駆け寄ろうとする私を、後ろから来た立花くんが呼び止めた。


「真っ直ぐ帰るんだろ?」

「うん、疲れたし」

「歩き?」



その質問に「ううん」と答えそうになってハッとする。藤井は学校から直行してるからチャリで来てるはず。


勝手に帰りは藤井と帰ろう……なんて思ってた私は藤井のチャリに乗せて貰う気満々だったけど、藤井とそんな約束したわけじゃないし、

ましてや立花くんに呼び止められたこの数分の間に藤井の姿を見失うという痛恨のミス。



「あ、うん……歩きかな」

「なら、送ってってやろうか?」

「え?いや、いいよ!!」

「即答かよ!」


私の即答具合がツボにハマったのか、またしても楽しそうに笑い出してしまう立花くん。

ツボ浅っ!!!
< 48 / 280 >

この作品をシェア

pagetop