愛すべき、藤井。
まあ、結局 何も思いつかなかったんだけどさ。おかげでもうかれこれ10分……
「……」
「……」
無言のままの私達は、それでもなぜか並んで歩いてて、藤井が押してるチャリのタイヤが回る音だけが響いている。
別に喧嘩したわけじゃないのに、なんでこんなにも空気が重たいんだろう。告白の後だって、こんな重たい空気になりゃしなかったのに。
せめて1人で帰りたかった。……そう思った時、隣を無言で歩いていた藤井が、話し始めた。
「……立花に、かなり気に入られてたじゃん」
「あんなの社交辞令だよ、チャラ男だもん」
「意外とマジかもしんねーじゃん」
「……そうだね」
突然話し始めた藤井に、いつもみたいなテンションを取り戻せない私は、藤井を一切見ないまま、淡々と言葉を紡ぐ。
「立花イケメンだしなー、付き合えば?楽しいサマーバケーションになるんじゃねぇの」
「俺は今日の合コンも収穫なかったなー」なんて、独り言みたいに呟く藤井。