愛すべき、藤井。
***
「うーめー」
「完全に遅刻だよ、夏乃」
「分かってるわ、暑くて死にそう」
「先生には上手く言っといたよ」
「えー?トイレ立てこもり?やだよ?噂になるじゃん、やだよ?」
学校に着いたのはちょうど1限目が始まった頃で、途中から教室に入る勇気が無かった私は、空き教室で時間を潰した。
先生が来たらどうしよう……なんて思いながら過ごす1時間はとっても苦痛だったけど、そんな苦痛な1時間ですら、私の頭を埋め尽くすのは藤井だった。
やっぱ怒ってんのかなー……とか。
私の気持ちには答えられない=友達には戻れないなのかなー?とか。
10分休みのタイミングでコソコソ教室へとやって来た私に、うめはヤレヤレと呆れ顔だったけれど、
「で?何があったの?」
こうしてちゃんと、私の話を聞こうとしてくれるうめに、今まで何度救われて来たか分からない。
「あー、うん。藤井、今日どんな感じ?」
「んー、あっちはあっちで変だけど」
「へ、変って??」
「夏乃から電話があった後、気になって藤井を観察してたんだけどさ。なんかボーッとしてたり、かと思えば落ち着きがなかったり、神田に話しかけられても上の空で、神田も首傾げてた」
「……そう」
ガタンと音を立てて、自分の席へと座った私に、後ろをついてきていたうめが「で!!何があったのよ!」と痺れを切らした。