愛すべき、藤井。



「……オレ、ニホンジンダカラ、エイゴ、ドントタッチミー」



…………今日、初めて聞いた藤井の声。
あんなに恋しいと思っていた藤井は、例え普段より少し遠い存在に感じている今だって、


やっぱり中身は変わらず残念なままなのだと安心した。


何、エイゴ、ドントタッチミーって。

『私に触らないで下さい』??英語はお願いされても藤井なんかに触らねぇだろうよ。安心しろ。

あれでしょ、I don't knowの間違いとか。
いや、頼むよ、藤井。

頼むから、今のドントタッチミーのくだりが冗談でありますように。くれぐれも本気じゃありませんように。



まさか、これで本気とか言われたら、こんな奴を好きになってしまった自分が恥ずかしいだろ。


「藤井、ドントタッチミーの意味分かってるか?」

「……よく聞くんで言ってみました」



あぁ。早く終わらないかな、授業。
早く『バーカ』って言いたい。早く顔見て話したい。


アホな藤井の声に名前を呼ばれて、安心したい。


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