愛すべき、藤井。
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一人ぼっちの帰り道。
夏の陽は長くて、まだまだ日が沈まない。
アスファルトが放出する熱と沈みかけの太陽が、私に多量の暑さを与えているはずなのに、
今、私が感じているのは藤井がいない寂しさだけだ。
結局今日1日、藤井は私を避け倒してくれた。
10分休みの度に姿を消して、戻ってくるのは先生が教室に入ってくるほんの少し前。
昼休みだって、いつもなら教室で食べてるくせに今日は神田くんを連れて颯爽と教室を出ていく藤井を見て、もう追いかけることすら諦めた。
こんなことになるんなら、言わなきゃよかった。
気持ちを伝えたことで、藤井が私から離れていくんなら、やっぱり隠しておくべきだった。
藤井を好きな気持ちを隠して、女の子として見てもらえないけど、藤井の隣で笑ってる方がよっぽど私らしかったんじゃない?
売り言葉に買い言葉で、ちっとも甘い雰囲気にはならないけど、藤井が笑ってて、つられて私も笑う。
そんな毎日で良かったじゃんか。
「あー、時間戻んないかなー」
出来れば藤井に気持ちを伝える前に戻りたい。
藤井〜〜〜〜、もうやだよ。
戻ってきてよ。友達でいいからさ!!もう好きとか言わないからさ!!
絶対に絶対に、藤井が間違いなく100%悪いと思ってるけど、無神経って言ったことも謝るし、藤井を好きだって気持ちも頑張ってちゃんと……。
───ブブッブブッブブッ
色んなことをあーだこーだと考えていた私は、ブレザーのポケットの中でスマホのバイブが鳴るのに気づいて立ち止まった。