愛すべき、藤井。
私達はやっぱり売り言葉に買い言葉で、気が合う友達同士が1番しっくり来るのかもしれないね。
体育の時間に、たまたま目が合って口パクで言い合う『アホ』と『バカ』も。
突然の雨に2人でずぶ濡れになりながら帰る放課後も。
2人で白目向きながら勉強するテスト期間も。
思い出せば全部、藤井との思い出は全部 笑ってる。私も、そんで藤井も。
───キキィッ
「……なんで、」
「ハァ……ハァ……」
聞き慣れたチャリのブレーキ音に顔をあげれば、息を切らした藤井が私を見つめながら息を整えていた。
「……夏乃、ごめん」
「この間から藤井は謝ってばっか」
「避けてごめん!……朝、どんな顔して迎えに行けばいいのか分かんなかった」
「待ってたのに」
「うん、本当に……ごめん」
謝ってばっかの藤井なんて、藤井じゃないよ。
いつも失礼極まりない暴言を私に容赦なく吐き捨てるくせに、調子狂うじゃんか。
「ねぇ、藤井」
「……ん?」
やめてよ、やけに優しい声出すの。
こっちがどんな気持ちで、これからどんなこと言おうとしてるか分かってんのか、こら。
藤井を見つめ返して、フッと小さく微笑めば、それを見た藤井の息を呑む間抜けな顔がなんかもう面白くて、どうでも良くなった。
好きとか、好きじゃないとか。
もう全部 どうでもよくなったわ。