愛すべき、藤井。

藤井にとってはただの『友達』


***


藤井に好きだと告げたあの日。


心臓は壊れるくらいにうるさくて、夏の夕暮れのオレンジがやけに眩しくて、どうしようもなく、藤井がかっこよく見えた。


今なら言えるかもしれない……なんて思ったあの時の私は本当に甘かったよ、藤井。


『すごい好きだよ、藤井』


…………あんなにストレートに伝えたのに、


『……え?誰が?は?え、夏乃が?誰を?俺?……は?』


肝心な藤井はやっぱりクソほど鈍感で。
1mmも私の気持ちに気づいてなくて。


それだけならまだしも……


『藤井、チャック開いてるよ』

『……あ、まじだ』


藤井の野郎、まさかのチャック全開と来たもんだ。ムードもクソもありゃしない。

つーかチャック全開で人のチャリの後ろに乗ってんじゃねぇよ、藤井。


挙句、チャックを閉めた藤井はその後、トドメを刺すように首をかしげた。


『で?夏乃は誰が好きだって?』

『だから、藤井が好き!!』

『は?』

『え……?』

『…………ぶっ!!!!ちょ、待てって、くくっ……だめだ、笑いが止まんねぇ!!ネタすぎる、死ぬ、ぶっ……思い出しても、笑える……くくっ』


腹抱えて笑いやがった。


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