愛すべき、藤井。
どうにか夏乃を泣き止ませたくて、後先考えずに俺の手は自然に夏乃の頭を撫でてた。
そんで、俺の口から出た『ごめん』。
バカな俺はこの一言で全部丸く収まると思ってた。いつもみたいに夏乃が『ふざけんのも大概にしろよ、藤井』とか言ってきて、俺がそれにまた言い返して。
いつもみたいに最後は笑って家に着く。
そう信じて疑わなかった……この時までは。
それなのに、頭の上に乗った俺の手を払いのけた夏乃はやっぱり目から大粒の涙を流したまま、
振り向く事さえせずに俺に背を向けて走り出した。あの時の俺の心の焦りは、言葉にならないほどで。
いつも一緒に笑ってた夏乃と、ここに来て初めての展開に俺の頭は思考を停止。
1人の帰り道。
頭の中は夏乃でいっぱいで、いつから俺のこと好きだったんだろうとか、そもそも何で俺?とか、聞き間違い?とか
いや、でも泣いてたし。
って、永遠ループ。