愛すべき、藤井。
だから夏乃は、俺にとって転校初日に初めて話しかけてくれた大事な友達だ。
あれから時間は流れて、あの頃よりもお互い素直になれない部分は出てきたけど、それでも隣で笑ってられるこの関係が俺は本当に好きだったし、
だからこそ、壊れるのが怖かった。
……夏乃とは、ずっとこれからも今まで通り、一緒にバカやって笑い合って、売り言葉に買い言葉で仲良くしていきたいと思ってるから。
夏乃のことは好きだけど、その『好き』の中にあるのは『友情』だけだ。
「ちょっとー!藤井?」
「おー?」
「何さっきからボケっとしてんの、邪魔!もっとそっち行け」
「邪魔とはなんだ、邪魔とは!今色々考えてたんだよ」
「藤井の色々は大体エロいことでしょ。あーきもい、あーきもい」
「何で2回言った?きもいなんで2回言った?」
「アホか、大事なことだからに決まってんでしょ」
夏休みに入ったってのに、毎日のように顔を合わせている俺と夏乃は、ただ今 補習の真っ只中。
期末テストで2教科以上赤点を取った奴のみ参加を許された、いわゆるプレミアムな勉強会ってやつだ。
俺は日本史と英語。
夏乃は数学と古文。